公務員試験において国家一般職は、他の試験種と併願される傾向にあり、公務員試験の中でも受験者が多い傾向にあります。そのため、国家一般職の仕事に興味を持ったという方は少なからずいらっしゃるかと思います。皆さんが国家一般職を志望する上で気になるものの1つは、やはり給与だと思いたす。
以前、国家公務員と地方公務員のそれぞれのメリットデメリットを比較した記事を書きました。その中で、国家一般職のメリット、デメリットについてご紹介しました。
どのような働き方を望むか、何をやりがいに感じるかによって、国家一般職の志望度というものが変わってきます。その志望度を決める1つの指標として、この給与というものも含まれてくるかと思います。
そこで、今回はよりリアルな国家一般職の給与と県庁職員の給与をご紹介したうえで両者を比較していきたいと思います。
何歳でどれくらいもらえるのか、最終的に到達する年収はいくらなのか、気になるところでしょう。
そのような疑問に答えるため、国家一般職の給与、年収の推移についてご紹介していきたいと思います。
平均年齢と平均給与の関係性について
まずは参考までに国の平均年齢と平均給与月額をご紹介します。
下記の表は、人事院が公表している国家公務員給与の実態~平成31年国家公務員給与等実態調査の結果概要~から抜粋しました。
ここで給料と給与の違いについて簡単に補足いたします。給料は、基本給のみで地域手当や通勤手当、残業手当などの諸手当が含まれていないものです。
一方、給与は、基本給に地域手当や通勤手当、残業手当等の諸手当が含まれたものです。
ですから、職員に実際に支給されている金額を見る場合、給与を見ることになります。
適用俸給表別、平均年齢、平均俸給額及び平均給与月額(令和元年8月現在)
※いわゆる国家公務員総合職試験、国家一般職試験による採用者は、行政職俸給表(一)に該当する。
出典)国家公務員給与の実態~平成31年国家公務員給与等実態調査の結果概要~(人事院)
https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/index_pdf/koumu_jittai.pdf
この表をなぜご紹介したか、それはこの表をみて国家公務員43歳くらいだと平均給与月額411,123円もらっていると判断して頂きたくなかったからです。
何が言いたいかといいますと、平均年齢に対して平均給料月額は対応していないということです。
この表は、国家公務員一般行政職の平均年齢を記載し、その横に国家公務員一般行政職の平均給料月額を記載しているだけです。
さらに、この表で示されている国の数値は、国家総合職を含めた平均給与月額です。
そのため、国家一般職のみの平均給与月額は、この数値より低くなるはずです。
よく公務員の平均給与ランキングなどに用いられている平均年齢や平均年収での比較は、あまり参考になりません。
平均年齢の人が平均給与月額をもらっているわけでなく、現実にそぐわない数字が書かれている場合があります。
そこで、今回は年齢別によりリアルな国家一般職の年収を皆さんにお示しするため、国家一般職(20代~50代)に対する聞き取り調査と国や県が公表している詳細なデータをもとに金額をもとめてみました。
まずは、今回私が行ったそれぞれの給与の算出方法をご紹介します。
国家一般職の給与算出方法
出先機関の国家一般職採用の職員(20代~50代)に対する聞き取り調査と「平成30年国家公務員給与等実態調査報告書」をベースに給与を算出しました。
平成30年国家公務員給与等実態調査報告書のうち参考にしたものが、行政職俸給表(一)の給与決定上の学歴別(高校卒・大学卒)、経験年数階層別、級別平均俸給額です。
こちらのデータには、就職年数に応じた国家公務員の基本給が掲載されています。
このデータをもとに、今回はさいたま市の出先機関に勤務している国家公務員と地域手当がつかない勤務地、今回は松江市を想定して、年齢別の平均給与を算出しました。
さいたま市を選んだ理由は、さいたま市には関東信越国税局、関東管区行政評価局、関東管区警察局、関東財務局、関東経済産業局、関東信越厚生局、関東農政局、関東地方整備局、人事院関東事務局、北関東防衛局があるからです。
なお、地域手当や月収、年収は、人事院規則に書かれている計算方法で算出いたしました。
国家公務員の地域手当の詳細については、以下の記事でご紹介しています。気になる方はご覧ください。
さいたま市に勤務する国家公務員の地域手当は基本給の15%になります。また、今回の算出にあたり、扶養手当、通勤手当は加えずに計算いたします。
ですから、実際の年収は、今回の数値より高くなる可能性があります。
超過勤務手当いわゆる残業代は、月平均20時間として計算いたします。
55歳は課長級を想定しているため、特別調整額という名の管理職手当を付与しています。
出所)国家公務員の諸手当:https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/index_pdf/teate_gaiyo.pdf
ここで算出された金額は、私が独自に算出したものです。そのため、実際の国家一般職給与と異なる可能性もありますので、その点はご了承ください。
参考:ボーナスの算出方法
期末手当
{(俸給+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額+役職段階別加算額(※1)+管理職加算額(※2)}×(期別支給割合)×(在職期間別割合)
勤勉手当
{(俸給+専門スタッフ職調整手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額+役職段階別加算額(※1)+管理職加算額(※2)}×(期間率)×(成績率)
※1{(俸給+専門スタッフ職調整手当)の月額+これらに対する地域手当等の月額}×役職段階等に応じて定められた加算割合(5%から20%)
※2俸給月額×管理・監督の地位に応じて定められた加算割合(10%から25%)
出典)平成30年国家公務員給与等実態調査報告書
https://www.jinji.go.jp/kankoku/kokkou/30kokkou.html
国家公務員の諸手当の概要
https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/index_pdf/teate_gaiyo.pdf
国家一般職の年齢別平均年収
出先機関の国家一般職採用の職員(20代~50代)に対する聞き取り調査と「平成30年国家公務員給与等実態調査報告書」をベースに給与を算出しました。
その結果、国家一般職の年齢別平均年収は、以下のとおりになりました。
年齢別平均年収その1 地域手当15%
国家一般職(勤務地:さいたま市)の年齢別平均給与
年齢 | 平均基本給 | 地域手当 | 残業代(月20h) | 平均月収 | 平均年収 | |
国家一般 | 30歳 | 203,500円 | 30,525円 | 34,842円 | 234,025円 | 4,267,820円 |
40歳 | 283,000円 | 42,450円 | 48,454円 | 325,450円 | 5,935,102円 | |
50歳 | 371,794円 | 55,769円 | 63,657円 | 473,863円 | 7,797,297円 | |
55歳 | 405,069円 | 60,760円 | 0円 | 528,129円 | 8,694,396円 |
※扶養手当、通勤手当を含まず
さいたま市の出先機関に勤務する国家一般職は、大体このような給与となりました。
30歳で年収400万前半。40歳には年収600万弱となり、50歳になると年収700万後半まで到達します。
50歳の年収辺りで定年を迎えるのが県職員のボリュームゾーンではないでしょうか。
今回、55歳は管理職を想定しているため、超過勤務手当(残業代)の支給対象ではありません。しかし、管理職は管理職手当を支給されることから、平均月収、平均年収ともに50歳よりも高くなっています。
40歳までは、基本給が低く年収も高いとは言えません。
40歳で年収600万いかないとなると、同世代の大手企業のサラリーマンと比較した場合、若干低いように思います。
その要因の1つに、国家一般職は多くの場合、30〜40半ばまで係長職が続くことが挙げられます。
国家一般職は、係長から課長補佐に上がるタイミングである40後半から50代にかけて基本給の伸びが大きくなります。
なぜなら、このタイミングで出先機関の課長補佐や地方事務所の課長(管理職)になるからです。それまで国家一般職は我慢が必要です。
その後順調に昇進していけば出先機関の課長級となり、最終的に、年収800万以上に到達することになります。
ここでの数値は、さいたま市で勤務していることを前提に算出されています。
つまり、地域手当15%が年収に含まれているわけです。この地域手当がないとなると年収は大きく下がることになります。
この点について以下の記事でもご紹介していますので、気になった方は是非ご覧ください。

年齢別平均年収その2 地域手当0%
国家一般職(勤務地:松江市)の年齢別平均給与
年齢 | 平均基本給 | 地域手当 | 残業代(月20h) | 平均月収 | 平均年収 | |
国家一般 | 30歳 | 203,500円 | 0円 | 30,298円 | 203,500円 | 3,711,148円 |
40歳 | 283,000円 | 0円 | 42,134円 | 283,000円 | 5,160,958円 | |
50歳 | 371,794円 | 0円 | 55,354円 | 427,148円 | 7,028,431円 | |
55歳 | 405,069円 | 0円 | 0円 | 405,069円 | 7,681,369円 |
※扶養手当、通勤手当を含まず
松江市の出先機関に勤務する国家一般職は、大体このような給与となりました。
30歳で年収300万円後半。40歳には年収500万強、50歳になった頃には年収700万以上を超えてくるようになります。
40歳までは、基本給が低く年収も高いとは言えません。
係長から課長補佐に上がるタイミングである40後半から50代にかけて基本給の伸びが大きくなります。
その後順調に昇進していけば出先機関の課長級となり、最終的に、年収750万程度になります。
地域手当の存在は大きく、年齢を重ねるごとに地域手当の重みは増していきます。
50歳以上になると年収100万円以上の差が生まれてきます。
勤務地によって年収が大きく異なる点も国家公務員と地方公務員の大きな違いとも言えます。 この点について以下の記事でもご紹介していますので、気になった方は是非ご覧ください。
まとめ
今回の調査から得られた結果をまとめます。
出先機関の国家一般職は、地域手当が比較的もらえる地域に勤務していれば、30歳で年収400万前半。40歳には年収600万弱となり、50歳になると年収700万後半まで到達します。
地域手当がもらえない地域では、30歳で年収300万円後半。40歳には年収500万強、50歳になった頃には年収700万以上を超えてくるようになります。
50歳の年収辺りで定年を迎えるのが県職員のボリュームゾーンではないでしょうか。
今回、55歳は管理職を想定しているため、超過勤務手当(残業代)の支給対象ではありません。しかし、管理職は管理職手当を支給されることから、平均月収、平均年収ともに50歳よりも高くなっています。
その後順調に昇進していけば出先機関の課長級となり、最終的に、年収850万程度になります。
今回ご紹介しませんでしたが、本省勤務の国家一般職と県庁職員を比較した場合は、本省の国家一般職の方がやや高い結果になります。
なぜなら、本省勤務の国家一般職は、東京特別区の地域手当20%と本省手当がつくからです。おそらく、最終的に年収900万は到達するでしょう。
出所)国家公務員の諸手当:https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/index_pdf/teate_gaiyo.pdf