公務員試験について調べていると、地方上級という言葉を見聞きしたことがある方が多数いらっしゃるかと思います。
しかし、地方上級が何なのか分からないという方も少なからずいらっしゃるかと思います。
また、地方上級にも「型」が複数あり、自治体によって試験の「型」が異なります。
「型?、何を言っているのかさっぱり」という方もいらっしゃるかと思います。
私も公務員試験を始めたばかりの時は同じような疑問を持っていました。
「地方上級って地方公務員なのは分かるけど、具体的にどんな試験なのかは分からない」
「地方上級って地方公務員大卒程度のこと?」
「自分が受験する自治体は地方上級の何型になるの?」
といったような疑問を持たれている方がいらっしゃるかと思います。
今回はこのような疑問に答えるべく、地方上級について詳しく解説していきたいと思います。
地方上級とは?
地方上級とは、広義の意味では地方公務員採用試験のうちの大卒程度の試験を指します。
狭義の意味では、大卒程度の都道府県と政令指定都市の職員採用試験を指します。
この場合、地方上級に該当しない自治体(中核市、その他の市町村)の大卒程度試験は、市役所試験(上級)と呼ばれます。
公務員試験業界では、地方上級とは、47都道府県、東京特別区、全国20の政令指定都市の合計68の自治体における大卒程度の採用試験を指します。
地方上級という言葉は、公務員試験業界から生まれた言葉であるため、明確な定義がありません。
この記事では、地方上級を狭義の意味の「大卒程度の都道府県と政令指定都市の職員採用試験」と扱うことにして話を進めます。
しかし、実際の自治体が行っている試験では、あまり地方上級という言葉出てきません。
なぜなら、地方上級試験のことを自治体ごとで「上級」、「Ⅰ種」、「I類」、「大卒程度」等の呼び名が様々だからです。
各自治体の受験案内で「上級」、「Ⅰ種」、「I類」、「大卒程度」等の表記があれば、それは地方上級を意味しています。
「地方上級があるなら地方中級や地方初級があるのか?」という疑問が生まれてくるかと思いますが、あります。
地方中級は短大卒程度の試験で、地方初級が高卒程度の試験です。
高卒程度の試験区分については、受験申込時点で、四年制大学、短大(短大扱いを含む。)及び高専を卒業又は在学中の人は、受験することができません。
同様に短大卒程度の試験区分については、受験申込時点で、四年制大学を卒業又は在学中の人は、受験することができません。
地方上級の受験資格
地方上級の受験資格は、基本的に各自治体によって異なりますが、大卒程度の試験であることから、大卒者でないと受験資格がないわけではありません。
つまり、地方上級は、大卒者しか受けられない、という学歴上の要件を意味するわけではありません。
では、地方上級の大卒程度とは何なのか?
地方上級は、試験の難易度や必要な能力の目安が大学卒業程度ということを表しています。
大卒以上の学歴を持つ人もいれば、高卒で国家公務員採用試験を受験して採用される人もいます。
大半の自治体において、地方上級は、年齢要件にさえ合致していれば誰でも受験が可能な試験なのです。
ちなみに埼玉県の地方上級の受験資格は、以下の2つだけです。
・日本国籍を有する人
・平成2年4月2日から平成11年4月1日までに生まれた人
(令和2年4月1日現在21歳〜29歳)
出所)令和2年度埼玉県職員採用上級試験等受験案内より
地方上級の業務
地方上級における事務系の試験種で採用された職員は、一般事務や学校事務として働くことになります。
地方上級や市役所(上級)で採用された職員は、各自治体の幹部候補生とされ、政策の企画・立案など中枢的な業務まで関わることができます。
異動は、約3年程度で様々を場所を経験することになります。
地方上級の給与と出世
初級、中級、上級によって初任給が異なります。上級の方が初級より3、4万円ほど初任給が高めです。
また、地方上級は出世のスピードも初級、中級より早めです。
実績と評価次第では、各自治体の事務方トップ(副知事や副市長)になることができる可能性があります。
ただし、地方上級で採用された人間が全員幹部になることができるとは限りません。
逆に評価次第では本庁の係長どまりで定年を迎えるという方もいらっしゃいます。
一方、高卒程度試験で採用された方の中からも課長まで昇進している方はいらっしゃいます。
つまり、当人の努力次第ということになります。
地方上級のタイプ
その地方上級は、出題内容によって型式(タイプ)が異なり、全国型、関東型、中部・北陸型に分かれます。
これら3つの型式に全国のほとんどの道府県庁と政令指定都市試験が該当します。
ただし、ほとんどというのは、全ての都道府県庁、政令指定都市ではないことを意味しています。
ちなみに〇〇県という名の広域自治体は、全国型、関東型、中部・北陸型のいずれかに該当します。北海道、東京都、京都府、大阪府は、独自の試験を課しています。
これらの型式に該当しない都道府県庁と政令指定都市は、独自の出題形式で試験を行っているのです。
それぞれの型式の詳しい出題科目は、下の記事でご紹介しています。ぜひご覧ください。
地方上級(全国型)
地方上級(全国型)は、地方上級試験のベースとなる試験型です。
そのため、全国の県庁や政令指定都市の中でも最も多くの自治体がこのタイプに該当します。
全国型に該当する自治体は以下の自治体です。
県庁
青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県(行政)、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福島県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
市役所
仙台市、さいたま市、千葉市、新潟市、静岡市(事務A)、浜松市、名古屋市(行政一般)、広島市(行政)、北九州市、福岡市、熊本市
※政令指定都市は、教養試験において、横浜市、川崎市、相模原市、名古屋市(法律、経済)、京都市、堺市、神戸市、岡山市が独自で出題をしています。その他の政令指定都市は、全て全国型です。
全国型は、教養試験、専門試験ともに全問必須回答です。以下がその内訳です。
教養試験(全問必答) 50問
〇一般知能 27問
数的処理17問(数的推理⑥、判断推理⑨、資料解釈①)
文章理解9問(現代文③、英文⑤、古文①)
〇一般知識 13問
人文科学6問(日本史②、世界史②、地理②)
自然科学6問(数学①、物理①、化学②、生物②、地学①)
社会科学12問(政治①、経済③、法律③、社会(時事)⑤)
40問全問必須回答
専門科目(全問必答) 40問
必須科目 40問
政治学②、行政学②、国際関係②、社会政策③
憲法④、行政法⑤、民法④、刑法②、労働法②
ミクロ経済学・マクロ経済学⑨、財政学③
経営学②
50問全問必須回答
地方上級(関東型)
関東地方の多くの県庁は、この出題形式です。
関東型に該当する自治体は以下の自治体です。
茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、長野県、新潟県、静岡県
政令指定都市は該当がありません。
地方上級(関東型)は、教養試験が全問必答式ですが、専門試験は選択回答式です。
以下がその内訳です。
教養試験(全問必答) 50問
〇一般知能 21問
数的処理12問(数的推理⑤、判断推理⑥、資料解釈①)
文章理解9問(現代文③、英文⑤、古文①)
〇一般知識 29問
人文科学9問(日本史③、世界史③、地理②、文芸①)
自然科学7問(数学①、物理①、化学②、生物②、地学①)
社会科学13問(政治①、経済③、法律③、社会(時事)⑥)
50問全問必須回答
専門科目(全問選択回答) 50問
選択科目 50問
政治学②、行政学②、国際関係③、社会政策③
憲法④、行政法⑤、民法⑥、刑法②、労働法②
ミクロ経済学・マクロ経済学⑫、財政学④、経済政策②、経済史①
経営学②
50問中40問選択回答
関東型は、教養試験において一般知識分野からの出題が多い傾向にあります。特に数的処理の出題が少なめです。わたしのような数的処理が苦手な人にとっては、ありがたいですね。その分、人文科学や自然科学、社会科学といった暗記科目から出題は多めです。
出題量が多い、日本史、世界史、地理、化学、生物のうち多くともどれか4つは勉強しておきたいです。特に出題量が多い日本史、世界史どちらかは勉強しておくと良いでしょう。
専門試験は、選択式で50問中40問選択して回答します。10問は回答しなくて良いわけです。
この選択式はどのようなものかといいますと、全部で40問回答していれば、民法6問中3問だけ回答ということもできるわけです。回答の組み合わせは無限大です。
ミクロ経済学・マクロ経済学は12問出題されます。
そのため、経済系科目が苦手な方は、ミクロ経済学・マクロ経済学以外の全ての科目を回答していれば、最少で2問回答ですみます。
地方上級(中部・北陸型)
中部・北陸型に該当する自治体は以下の自治体です。
岐阜県、愛知県、三重県、富山県、石川県、福井県
政令指定都市は該当がありません。
地方上級(中部・北陸型)は、教養試験が全問必答式ですが、専門試験は選択回答式です。以下がその内訳です。
教養試験(全問必答) 50問
〇一般知能 25問
数的処理16問(数的推理⑥、判断推理⑨、資料解釈①)
文章理解9問(現代文③、英文⑤、古文①)
〇一般知識 25問
人文科学8問(日本史③、世界史②、地理②、文芸①)
自然科学7問(数学①、物理①、化学②、生物②、地学①)
社会科学10問(政治①、経済②、法律②、社会(時事)⑤)
50問必須回答
専門科目(全問選択回答) 50問
選択科目 50問
政治学②、行政学②、国際関係②、社会学②、社会政策②
憲法⑤、行政法⑧、民法⑦、刑法②、労働法②
ミクロ経済学・マクロ経済学⑧、財政学③、経済政策②、経済事情③
50問中40問選択回答
中部・北陸型は、教養試験において、一般知識と一般知能の出題が同じ割合です。日本史の出題が3点分と多めです。中部・北陸の県庁を目指す方は、日本史の勉強することをおすすめします。
その次に世界史、地理、化学、生物の出題が2問となっています。
この辺りは勉強しておきたいですね。
専門試験の特徴は、行政法の出題が8問とかなり多く、民法も7問と多いことです。また、経済の時事的な問題(経済政策、経済事情)が多いことも特徴です。
行政法、民法の勉強はしっかりとしておいた方が良いでしょう。
その他、他の試験種でも出題されやすい憲法、政治学、行政学、ミクロ経済学・マクロ経済学、財政学も勉強しておくと良いでしょう。
経営学は出題されません。
国税専門官で経営学を選択しようとしている方は注意が必要です。
全国型、関東型、中部・北陸型に該当しない自治体
全国型、関東型、中部・北陸型の型式に該当しない都道府県庁と政令指定都市は、独自の出題形式で試験を行っています。
以下がその自治体です。
都道府庁
北海道、東京都、京都府、大阪府
市役所
札幌市、東京特別区、横浜市、川崎市、相模原市、静岡市(事務B)、名古屋市(法律、経済)、京都市(一般事務職)、大阪市(行政、法律)
ちなみに〇〇県という名の広域自治体は、全国型、関東型、中部・北陸型のいずれかに該当します。
試験科目については下記の記事でまとめていますので、科目選択の際には是非参考にしてみてください。