官庁研究シリーズの国家一般職第4回です。
今回は、防衛省の出先機関である、地方防衛局についてお話ししていきたいと思います。
地方防衛局と聞いて自衛隊をイメージする方がいるかもしれません。
ところが、地方防衛局の職員は、自衛隊員ではありません。地方防衛局で働く職員は、事務官や技官で構成される職員です。
地方防衛局とは
地方防衛局は自衛隊及び在日米軍の防衛施設の整備・管理、安定的な使用の確保、防衛施設周辺住民の生活福祉向上、地域住民との在日米軍との交流行事の実施等、幅広い業務を行い、国民と自衛隊及び在日米軍との架け橋となっています。
組織
総務部
総務課
会計課
契約課
労務管理官
企画部
地方調整課
周辺環境整備課
防音対策課
調達部
調達計画課
建築課
土木課
設備課
装備課
管理課
業務課
施設補償課
施設管理課
施設取得課
具体的な業務
・「広く防衛施策に対して地方公共団体や地域住民の理解と協力を得るため、地方公共団体などの対する防衛省の施策課題にかかる情報提供や説明の実施をしています。」
企画部(地方調整課)
・「在日米軍と地域住民が交流するイバントや防衛問題セミナーなどの企画・立案をしています。」企画部(地方調整課)
・「自衛隊や在日米軍が使用する防衛施設の建設(工事現場監督、建設企業や自衛隊・在日米軍との調整)を行っています。」調達部(調達計画課、建築課、土木課、設備課)
・「土地の取得・借上げ、防衛施設の管理をしています。」
管理部(施設管理課・施設取得課)
・「騒音などの障害を軽減するための基地周辺対策業務や訓練に伴い発生する損失などの補償をしています。」
企画部(周辺環境整備課・防衛対策課)
管理部(業務課・施設補償課)
・「駐留軍労働者(米軍基地内で働く労働者)の雇用・労務管理をしています。」
総務部(労務管理官)
行政区分の仕事
自衛隊や在日米軍が円滑に活動するためには、防衛施設の安定的な使用の確保が必要となります。
地方防衛局では、地方公共団体や地域住民の理解と協力を得るための活動や、防衛施設周辺にお住まいの地域住宅の平和で豊かな生活や福祉の向上を図るため、防衛施設と周辺地域との調和を図る様々な施設を行っています。
障害防止事業
自衛隊や在日米軍の大型車両の通行に伴う道路の損壊や演習場内からの土砂の流失などの損害を防止または軽減するため、地方公共団体が行う河川の改修、砂防ダムの建設などに対し、助成を行っています。
民生安定助成事業
防衛施設が所在することによる周辺住民の生活や事業に及ぼす影響の軽減を図るため、地方公共団体などが行う公園、道路、体育館、消防施設などの生活県連施設や農林漁業施設などの事業経営の安定に寄与する施設の整備に対し、助成を行っています。
防音事業
航空機などの騒音の障害を軽減するため、学校、病院、住宅などの防音工事に対し、助成を行っています。
移転措置事業
航空機などの騒音が著しい区域から所有者が建物の移転を希望する場合は、建物の移転補償や土地の買い入れを行っています。
緑化対策事業
移転措置事業で買い入れた土地を緑地帯や公園に整備しています。
漁業補償
自衛隊や在日米軍が行う海上での訓練などにおいて、漁船の操業を制限することがあります。漁業を板なんでいつか谷漁業経営上の損失が生じた場合にはその損失の補償を行っています。
損害の賠償
在日米軍による事件・事故などが発生し、身体や財産に損害を与えた場合には、被害者に対して損害賠償などを行っています。
防衛施設の取得・管理
自衛隊・在日米軍が防衛施設として使用するための土地の取得や借上げを行っています。また、取得した土地や建設した防衛施設の管理などを行っています。
技術区分の仕事
「防衛施設の建設」
防衛施設は、自衛隊や在日米軍、建設工事を実施する地方防衛局及び制度や設計基準などを策定する本省(整備計画局)が連携して建設しています。
1.施設計画
ユーザーである自衛隊や在日米軍のニーズに基づき、駐屯地・基地内「防衛施設」の配置場所の検討や施設計画の立案、予算要求資料の作成、地方公共団体との調整を行い、ユーザーのニーズをを具体化します。
地方防衛局の技官は、技術的な知見に基づき、ユーザーのニーズを具現化するにあたって協力を行っています。
2.調査・設計
次の調査・設計の段階では、施設計画に基づき、地方防衛局の技官が、実際に建設を実施するため、ユーザーとの調整、測量や地質調査等を行います。
そして、その調査結果を踏まえ、各種設計基準に従い「防衛施設」の設計を行い、工事図面を作成し、各種法廷手続きまで実施します。
3.建設工事
作成した工事図面に基づき、地方防衛局と建設企業が契約を締結し、建設企業が建設工事を実施します。
その際、建設工事を工事図面通り適正に建設工事を実施しているかどうかを地方防衛局の技官が実際に工事現場に赴き、現場監督官として品質管理や出来形管理を行います。
4.完成・管理
「防衛施設」が完成すると、地方防衛局の技官が完成検査を実施し、ユーザーである自衛隊などに引き渡します。
完成した「防衛施設」の維持・管理・修繕は、自衛隊で勤務する技官が行います。(大規模な改修は地方防衛局で行います。)
完成した「防衛施設」は国有財産であるため、国有財産法に則して各種手続きなどを行います。
全国の地方防衛局
地方防衛局は、防衛相の地方支分部局として、全国の主要都市にあります。
また、地方防衛局の下には防衛支局、防衛事務所、派出所があります。
北海道防衛局
管轄区域:北海道
東北防衛局
管轄区域:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北関東防衛局
管轄区域:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、長野県
南関東防衛局
管轄区域:神奈川県、山梨県、静岡県
東海防衛支局
管轄区域:岐阜県、愛知県、三重県
近畿中部防衛局
管轄区域:富山県、石川県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国四国防衛局
管轄区域:鳥取県。島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州防衛局
管轄区域:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
沖縄防衛局
管轄区域:沖縄県
地方防衛局の印象
防衛省の職員は、駐屯地や基地に勤務している自衛隊をイメージし、規律が厳しく、硬い職場の雰囲気をイメージしていましたが、地方防衛局は各地方の合同庁舎に他官庁とともに所在しており、職場の雰囲気は他の官庁と特に変わらず、働きやすそうな職場でした。
地方防衛局の仕事は、国民の生活と企業活動を守ることに繋がる大変やりがいのある仕事であると感じました。
参考文献